映画を観るために息子(もうすぐ2歳)を夜いかに早く寝かせるかという
ことに全精力を費やしている森雨(@moriame25525)です。

今回はロバート・レッドフォード監督『普通の人々』です。

普通の人々 [DVD]
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この作品は1980年のアカデミー賞の作品賞・監督賞・助演男優賞・脚本賞を受賞しています。
かなりいい作品なのに実はTSUTAYAからもらった本(ポイントが貯まってたもんで)を読むまで
知りませんでした。

毒親について書くにあたり、この映画のDVDを買って何度か観ました。
不思議なんですが、観るたびに毎回全く違った感想を持つんです。
この家族の在り様について深く深く考え、感じることができます。

私は大学時代に映画批評の勉強をしていたときに「初めの感想を大切にすること」
ということを学びました。
だから今までどんな作品も基本的には一度しか観ないようにしていたんですが、
2度目にこの『普通の人々』を観たときにあまりに違う感想を持ったことに正直驚きました。
だからというわけではないんですが、この映画は個人的に二回以上観られることをお勧めします。

ということで、今回私が書く内容は二回『普通の人々』を観た人間の言う事なのです。
それだけ留意して先をどうぞ。

『普通の人々』あらすじ

アメリカの中流家庭のある普通の一家が、長男のボート事故を皮切りに崩壊していきます。
自殺未遂と事故に対する罪悪感に苦しめられる次男。それを他人事のように見る家族。
次男の心の病を支え、解放させようとする精神科医。

一家のもつれきった糸はどこにつながっていくのか――?

母親、母親、母親!

とにかく母親(メリー・タイラー・ムーア)の表情に注目です。
冒頭に朝食を作るシーンがあるんですけど、元気のない息子が「食欲がない」
と一言漏らすだけで「あ、そう」とさっき作っていたフレンチトーストを
即ゴミ箱へポイ。
父親(ドナルド・サザーランド)がやんわり止めるのも無視してポイ。
息子を心配する一言も一切なしで「ゴルフ行ってくる」とさっさと出かけて
しまいます。

そのワンシーンでもうこの母親がどういう母親か、というのが
手に取るようにわかってしまいますよね。

父親は弁護士。母親は社交的な性格でパーティやゴルフにいそしむ毎日。
だからこそ、次男の孤独がどんどん際立ってきます。
数年前にボート事故で兄が亡くなり、その原因が同乗していた自分にあると
感じていた次男は自殺未遂を過去に起こしています。精神病院にも入院し、
まだ回復過程にあるにも関わらず両親は次男を腫れ物に触るように扱っています。

優秀だった兄の死をきっかけに崩れる家庭

お兄さんは水泳の世界では有能な選手でした。
母親はそんな長男を誰より愛し……と言いたいところですが、
観ていくとこの母親が長男を愛していたかどうかも正直疑問です。

私が思うに、この母親はきっと誰のことも愛していない(愛せない)人間
なんだと思います。
自己顕示欲が強く、兄の成績も結局は単なるアクセサリーでしかなかった。

彼女が愛しているのは自分だけ。
それも「弁護士の妻」である自分だけなんです。

だから次男がトラウマで苦しむ姿を見ているとまるで自分自身の本来の姿
を見ているようでイラ立ちを覚えていったんだと思います。
それを証拠に父親は友人に「妻は認めないがあの子は母親似だ」と言っているシーンがあります。

毒母は賢い。だから露骨に感情を表さない

次男を嫌い、またそんな息子の扱い方に戸惑う母親ですが、
そんな感じはおくびにも出しません。

彼女は完全に「弁護士の妻」である自分にしか目を向けていないのです。
決して「息子を案じる母」にはなろうとはしません。

毒親育ちならわかるんですが毒親育ちは死ぬほど相手の感情に敏感です。
母親がいかに自分の嫌っているかは全身で感じることが出来ます。
一方、自分の感情を表に出すのは苦手なので相当ピリピリきた状態でも「やばい」とは思いません。
次男が初めて紹介された精神科に行ったときの様子を見れば明らかですね。

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博愛主義的な父はいるだけで致命的

母親が冷たいので父親も冷たいかというとそうではありません。
父親のほうがまだ少し息子のことを想っているようです。

しかし、そんな父も妻との言い争いを避ける「事なかれ主義」なので
妻の少女のようにわがままで身勝手な言動も受け入れてしまっています。
パーティがあればホイホイ付いていき、都合の良いときだけ息子の心配をします。
↑日本のお父さんに多いちょっと子どもっぽいタイプ

普通に見れば「いるだけマシでしょ」と思うかもしれませんが、
こういったタイプのお父さんははっきり言っているだけで家庭崩壊を招きます。

妻に意見も言わず、いつもニコニコしているパパははたから見ればいい人ですが、
あまりの行動力のなさに絶望的な気分になります。
そしてこれまでの子育てや成長の過程でもこんな風に言われたことだけをのらくらやってたんだろうな
と思うと今度は妻に対して少し同情します。

これは二度目の鑑賞から得た感想なんですが、
夫が泣きながら「君のことを愛しているかどうかわからない」と言ったとき、
「それじゃあ妻がかわいそうだろ!!」と思いました。
そこは「一緒に立て直していこう」だろ?何全部妻のせいにしてんだよ!と思えましたね。

1度目は100妻が悪いと思ってたのに不思議……

毒母は間違いなく毒親育ち

祖母(毒母の親)が「あの子また精神病院に通ってるの」と
行ったときに孫を心配することなくすぐに「厳しくしつけるようにすると大丈夫よ!」と
言います。
祖母は長男の亡くなった事故の顛末を知っていてそんなことを言えるんだから
ちょっと普通じゃないですよね。

そんな祖母から育てられた毒母……わかりますよね。

相手の痛みがわかるかと言えばまずNOですから。

相手を変えるんじゃなく、自分が変わるしかない。

精神科医の支えのおかげでようやく自分を責めるのをやめ、
自分の人生を生きようとし始めた次男。

ラスト、そんな次男が「ママ、おやすみ」と毒母にハグします。
明らかに困惑した表情の母の顔。それを見る父。

変わらない・変えられない両親に息子が出来ることはただそれだけでした。
ただ、自立すること。母に求めるのではなく、母に与えることだったのです。

『普通の人々』が多くの人を感動させた原因

『普通の人々』はあまりにも普通の人々なんです。
いつしか演じていた役割を捨て、普通の人々に戻ることでしか歯車の動きを進めることは出来ない。

簡単なことで難しい。
そんな過程を丁寧に描き出している作品です。

少しでも気になる方はぜひご覧ください。

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