あなたも私も精神を病む可能性があるー水谷緑著『精神科ナースになったわけ』

本レビュー
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こんにちは、森雨です。

秋になって精神的にだるーく、落ち込んでいる人はいませんか?

季節の変わり目ってつらいですよねぇ…私もです。

今度久々に子どもを預けて精神科・心療内科に通院してみようかと思うんです…。
自律神経失調症・PMS・慢性じんましんなんかは全て心療内科で事足りますかね?

産後初の通院となりますが、とりあえず行ってみようと思います。
(何かあればレポします)

ところで今回はそんなメンタルを診る精神科のナースの方の実際にあったお話を
漫画にした水谷緑著『精神科ナースになったわけ』を読んでとても興味深かったので
そのお話です。

目次

精神科にどんなイメージがある?

ところで、あなたは精神科にどんなイメージをお持ちですか?

私のブログに来てくれる方の多くは、生きづらさを抱えた方やその周囲の人が多いので
それぞれ具体的な感想があると思います。

精神科のイメージ……

私の場合、幼いころに大変保守的なの父がある山里の廃墟のような建物を指さして

「あそこは〇チガイが行くところだ」
「一度入ったら二度と出られないんだぞ」

と言っていてすっごく怖かった思い出があります。

以来、『精神科=二度と出られない』というイメージがずいぶん長い間ありました。

しかし、まず姉が病んで病院に通うようになったころには身近な人間が通院しているということもあって
(なんてことない普通の病院)だと気づき、

また、私自身が通うようになるとさらにその思いを強くしました。

私は自分自身が生きづらさを抱え、精神科や心療内科などのメンタル面の治療を必要と
しているのもあって、自分の生活により身近な存在の病院です。

私的には、心がしんどいから精神科に行くのであって、鼻水が出るから耳鼻咽喉科に行くのと
大して変わりません。(極端に言えばね)

そういえば、海外ではカウンセリングは日本よりもっともっと身近で、
例えばウディ・アレンなんかは映画にもしょっちゅう自身が精神科医からカウンセリングを
受けているシーンがありますよね。(『アニー・ホール』とか)

長椅子に寝そべって、好きなように感情を表現したり質問に答えたりするやつ。

以前紹介した映画『18歳のカルテ』にも精神病棟が出てくるし、
マットデイモンが出てくる『グッドウィルハンティング~旅立ち』でもカウンセリング
シーンが出てきます。

とにかく、なんとなく日本よりずっと「人が病むこと」が身近に描かれているような
気がします。

『精神科ナースになったわけ』を読んでみて、色々わかったこと

ところで私は精神科は通院経験があるんですが、漫画の『精神科ナース』が働いていたような
精神病棟に入院した経験はありません。

なので、「精神の病棟って本当にこういうところだよ(^◇^)」なんて嘘は言えません。
わかんないんだから。笑

しかし、だからこそこの精神科ナースになったわけ (コミックエッセイの森)はとても興味深く読ませていただきました。

あ、最初に注意しておきたいんですが、この漫画の著者はナースではありません。
自身の体験談というわけではなく、すべて実際の精神科にお勤めの看護師や関係者の方に
お話を聞いてそこで主人公をナースにしてわかりやすくまとめて漫画にしたのがこの作品です。
いかにも自身の体験のようで「思ってたんと違う」って人がいるようなので注意してください。

精神を病むってどういうこと?

まず、この漫画のよいところは精神科の中ってこうなっていて、
こうであーで…驚いたでしょ?みたいな本じゃないところ。

主人公は元会社員で精神科の看護師になった女性。

かねてより、精神を病むということについて興味があったという人が
色んな人や経験を通して精神について学んでいきます。

精神科の入院患者やその環境に関して、下手に一般人の視点で描くと
好奇心の塊のような感じで突き進んでいってしまう場合もあるので
あえてフィクションであっても看護師の視点で描いているのは
(多少誤解を招くことはあるかもしれないけど)この漫画の場合
効果的かと思います。

例えばこの漫画では、

  • 統合失調症
  • 境界性パーソナリティー障害
  • うつ病
  • 自傷行為
  • 自殺念慮

こういった病気や行動について看ている側の視点で描かれています。

私が特に興味を持ったのが統合失調症。

都会に住んでいる人はわかると思うんですが、大勢人が集まるところに
行くと必ずと言っていいほど大声でひとり言を呟いている人に出会いますよね。

電車の中で見た中年女性はずっと組織的なグループに脳の中を盗み見る
装置を埋め込まれた話をしていました。

統合失調症の人は妄想や幻聴は意外と自分では気づかないようで
他の患者さんと話したりすることで「あれ?自分のいつも聞いてるやつも
幻聴なの?」ってそこで気づいたりするそうです。

こういうのって統合失調症でなくてもありませんか?
私は笑い声が聞こえるだけでも(もしかして私の事言ってる?)とビクビクしてますが…。

幻聴や妄想はストレスやドーパミンの過剰放出によって起こるといわれて
いますが、いつ「お前は選ばれし人間だっ」というような幻聴が突然
頭の中に侵入してくるかわからないのは恐ろしいですよね…。

先日、NHKの『バリバラ』で統合失調症の人への質問の中に
「街で何か叫びながら歩いている統合失調症の人がいたらどうすべきか?」
というものに当事者の方たちは「妄想や幻聴が聞こえている最中で仕方がないので
そっとしておいてほしい」と言っていたのでこれからもそっとしておきます。

でも、こういう精神病に対して、たとえ発端が好奇心などであっても
知ろうすることは大切なことですよね。

精神障害者=危険人物!!!

という社会の図式は今も昔も変わらないようなので、、、

「精神を病む」は誰にでも起こりうる

精神を病むというのは風邪をひくくらい普通のことのような気がします。

ストレスの多い社会生活で、インフルエンザには予防接種があるのに
うつ病や統合失調症には予防策はほぼないも同然です。

「ストレスを溜め込まないようにしましょう」

と言われていったいどのくらいの人が休みをとって好きなことが出来るでしょうか。

どんなに元気な人でも突然ガクンと落ち込んで死ぬことを考えたり、布団から朝起きれなくなることは
現実にあるんです。
心って思ったよりずーっとデリケートな臓器なんだと思います。

過去の要因は無視できない

うちのブログ自体が毒親育ちをメインとしていて、愛着障害や境界性パーソナリティー障害、
発達障害についての記事が多いせいもありますが、

その人が育った要因はやはり無視できません。

そのため、『ストレス耐性に強い・弱い』というのはやはりあると思います。

この漫画では境界性パーソナリティー障害についてざっくりですが
わかりやすく描かれています。

最後の章の『かまわない勇気』という話で自傷行為の絶えない
薄井さんという方が出てきます。

この方は幼いころに両親に養護施設に預けられていたせいもあり、
寂しさがあるんだろうけどどう対処すればよいのやらと困り果てます。

ここで、自傷が本人の意志だということで自分で傷に対処させて
「かまわない」方法をとるんですが、これを読んでいて私は思わず泣いて
しまいました。

薄井さんの気持ちが手に取るようにわかるし、
それに困り果てるナースの方たちの想いもよく分かるからです。

自傷については以前記事にもしましたが、

薄井さんの自傷が止まらないのは本人にも抑えようのないことなんですよね…。

基本的に自傷行為をする人は心の中に常に怒りを抱えているんじゃないかと思います。

薄井さんの場合、お母さんへの寂しさがそのまま怒りとなり、
その吐き出し方も吐き出す対象も分からないから自分を痛めつける結果と
なっているのだと思います。

自分の感情を無視して生きてきたから、これからも無視していかなきゃいけないことに
怒りとどうしようもない哀しみを抱えて自傷に走ってしまうんでしょうね。

よくわかります。

しかし、周囲の人はそりゃ自傷をしてほしくないし、傷ついてほしくもないんですよ。

だから、お互いしんどい。

精神科のナースは本当にご苦労されているかと思います。。

感情というものは幸せなら人生を彩りよく見せるときもありますが、
人によってはその感情に殺されそうになるときもあるんですよね。

感情に「俺を無視していると大変なことになるぞ」と脅されているような気分です。

心って、身体のどの部分よりも厄介で、難しいものですね…。

私のようにメンタルに興味のある方は読んでおいて損はない漫画かと思います。

難しそうな心の問題が、意外と身近なものだと気づくきっかけにもなるかと思います。

おすすめです。

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