こんにちは、森雨です。
最近SNSで『ちびしかくちゃん』というセルフパロディ漫画があるということを知りました。
そう、あの国民的漫画『ちびまる子ちゃん』を作者自身であらたなキャラクターで
パロッてみたというまさかまさかの単行本です。
さくらももこってちびまる子ちゃん以降の漫画はみんなシュールを突き抜けて正直よくわからない新しすぎる笑いの世界に突入してしまって、ちびまる子ちゃんで収入もガッポリあるので自由に好きな時に描きまくっているイメージがありました…。(たぶん事実)
表紙を比べてみてもぜんっぜんちびまる子ちゃんと違うのがわかります。
あの初期の可愛いまるちゃんはどこへ…?
しかし、間違っても「ママ、本屋さん行くなら『ちびまる子ちゃん』買ってきてね」という娘に『ちびしかくちゃん』を買ってきてはいけませんよ。
「なにこれ…まるちゃんとちゃうやん…」と思いながらもうっかり読んじゃったら明日学校に行けなくなることは確実です。
それほど強烈な漫画なのです。
目次
ちびしかくちゃんとは一体どういう漫画か
一言で言うと「ちびまる子ちゃん」をそのままネガティブにしたって感じの漫画です。
しか子ちゃんという主人公(顔の形が丸ではなく四角)が周囲の人にめちゃくちゃ責められたり虐められたり、理不尽な目に遭ったりするってだけの漫画です。
そして驚くべきことに、救いはほとんどありません。
オチも無いんです。
とにかく胸糞悪い漫画です。
友人だまちゃんとしかくちゃん…。
だまちゃんのひどさと周囲の冷たさはすごくて、それに耐えるしかくちゃんに「おいおいおい…他に誰かいないのかよ」と言いたくなるレベル。
しかし、いないんだなこれが。笑
↑家族もひどすぎるからもうどうしようもない…
残酷なまでの理不尽さが意外と懐かしい?
この漫画を読んだ多くの人と同じように「ひでーなこりゃ」ってイヤーなものを見た気になったんです。
でも、読んでから数日じっくり考えてみたら、自分の子ども頃もちょうどあんな感じだったと気づきました。笑
どこにいても何をしても先生から怒られ、友達にはいびられ。
塾に行けば「出来ない子」呼ばわりで怒られ、家に帰ればとことん邪険にされて……。
そんな毎日の繰り返しで本当に辛かったのを覚えています。(小5で遺書を書きました…)
私は髪型は当時おかっぱ頭でよく「ちびまる子みたい」と言われていましたが、まるちゃんのように嫌なことは「いやだプー」とか言えませんでしたね。
ただ、毎日泣いてばかりいたし相当理不尽だと思うことがあっても、我慢して悔しさで泣くことしか出来ませんでした。
だからこそ、今大人になってあのころよりは幸せだと心から思います。
先生や親と付き合いはないし、友達とも嫌なら距離を置ける大人ってサイコーだと思います。
そう考えると、過去を振り返れるのである意味「今が人生の中で一番サイコーです!」と思い直すにはいいかもしれませんね。
『ちびしかくちゃん』さくらももこの意図を推測する
みんなに愛されるキャラ『ちびまる子ちゃん』のさくらももこがなぜ『ちびしかくちゃん』を描いたのでしょうか。
私は以下のように推測しています。
- 『ちびしかくちゃん』がさくらももこの本来の少女時代である
- 辛い立場に立たされている子どもたちを応援するため
- ブラックユーモアの開拓
一つずつ解説してみます。
『ちびしかくちゃん』がさくらももこの本来の少女時代である
まず初めに考えたのが、
もしかしたら本来のさくらももことはこっちのことなのかもしれないっ
ということでした。
ご存知のように『ちびまる子ちゃん』はさくらももこのエッセイ漫画だと言われていますし、本人もまる子は自分だと言っています。
しかし、周囲のキャラクターは現実とは違います。
特に友蔵。
さくらももこのおじいさんは実際は超嫌なじいさんだったそうです。
ボケたふりして風呂を覗きに来たり、貯金箱からお金をくすねていたということがさくらももこのエッセイ『もものかんづめ』に掲載されていました。
友人たまちゃんやはまじは実際に存在していたそうなのでまさか実際の友人はあの『だまちゃん』たちのようではないでしょうが、、
しかし、いつでもまるちゃんのように明るく元気いっぱいというのは無理がありますよね。
さくらももこは昔親から誉められたことがなく、よその犬が褒められているだけでも「いいな」と羨ましかったらしいので、もしかしたらしかくちゃんのように暗い一面があったのかもしれません。
辛い立場に立たされている子どもたちを応援するため
次に考えたのは、もしかしたら辛い環境にいる子どもたちに向けたメッセージなのかも?ということ。
現実世界にはまるちゃんのように、守ってくれるじいさんも、仲の良い友達もいないという子がたくさんいます。
それに、私のように家や学校で辛い目にあっている子もいます。
漫画の中で、しかくちゃんも『ちびまる子ちゃん』を観て
「まるちゃんはいいなー、のびのびしていて……」
「うちもまるちゃんと同じ家族構成なのに…なんか違うなぁ」
「なんでだろ…。私がのびのびした性格じゃないから悪いのかな?」
と悩みます。
そんなしかくちゃんに、
「いやいや、違うよ!周囲の人間が悪いのであって、しかくちゃんが悪いんじゃないよ!」
とツッコミを入れたいところですが、子どもは親が悪い、教師が悪い、友達が悪いなんていう考え方を実際は出来ません。
気の弱い子はなおのこと、怒られたりいじめられたりする原因が常に自分にあると思い込んでいます。
『ちびしかくちゃん』は、大人に向けてちびしかくちゃんのような子どもがいることを忘れないでほしい、と言っているような気がするのです。
誰もが『ちびまる子ちゃん』にはなれないんだよ、と。
そういう問題提起なのかもしれません。
ブラックユーモアの開拓?
「いや、深く考えずに『ブラックユーモア』として読んでほしいんです!面白いでしょっ?」
と作者はもしかしたら思っているのかもしれません。
だとしたら…うーん……。
とても笑えないですよね…(*_*;
特に子ども時代が輝いていなかった人たちにとっては…
『ちびしかくちゃん』気になる人は読んでみては?
さくらももこが新しくこういった漫画を描いていることに驚いて読んでみましたけど、
繰り返すようですが、別に面白くはありません。
だまちゃんはサイテーだし、家族も「はあ?」ってぐらいムカつくし、何の救いもありません。
しかし、私はあえて『ちびまる子ちゃん』なんていないんだよ!
幸せになるには、自分でその環境から脱しない限り(大人にならない限り)無理だよ!
と作者があえてパロディ漫画を描くところには意味がある気がしました。
気になる方は(後悔するかもしれないけど)読んでみてはいかがでしょうか。
森雨でした。
追記:さくらももこ追悼
先日、さくらももこ先生が亡くなられたことがわかりました。
53歳の若さでお亡くなりになられ、本当に残念でなりません。
子どものころから氏の漫画やエッセイを楽しく読んでいました。今回の訃報を受けて、早速追悼する記事を書かせていただきました。
『ちびまる子ちゃん』の中のお気に入りエピソードや出産体験記『そういうふうにできている』、毒親育ちにも読んでほしい『メルヘン爺』の収録されている『もものかんづめ』までレビューさせていただいています。
ぜひ合わせて読んでいただければと思います。
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